おはよう、良い朝だ。
前日の金曜日は、帰りにいつも通り高度数チュウハイとワンカップを飲みながら帰ってきた。
ただ、次の日が土曜日なので、ウイークデイより少ない酒量で切り上げられた。
上手くいけばあと36時間くらいは労働のことを考えないですむかもしれない。
もう9時を回っている。
今日は10時から美容室を予約している。
ベッドから起き上がり机を見ると、飲みさしのストロングゼロが置いてある。
500ml缶に3分の1程度であろうか。
躊躇も感慨もなく飲み下した。
もっと気合の入ったドランカーがやれば、いわゆる迎え酒という儀式になるのだろう。
前日のアルコールの残った緩慢な動きでシャワーを浴び、歯を磨く。
アル中に夜のうちに風呂に入れというのはおそらく厳しい。
朝でも昼でもめんどくさいんだから。
散髪は特に問題なく終わった。
いくら9%でも缶チューハイ160mlでは顔が赤くならなかったが、髪を切るまで近づくと美容師は酒飲んでるってわかるだろうな。
客もそこまで多くなかったし、大目に見てくれ。
あんたとしゃべるのもなかなか気を使うんだ。
美容室を出ると近くのコンビニに立ち寄って発泡酒を買った。
まだ午前中なので度数に少し配慮した格好だ。
飲みながら家に向かって歩く。
家の近くのディスカウントストアに寄る。
酒はいくらあっても困らないと思い、高度数チューハイを数缶と、安いウィスキーを買った。
家に着くと12時少し前。
歩きながら飲んだこともありもうだいぶ回っている。
本も読めないし、ゲームをする気にもならない、朝から何も食べていないが、酒で摂取したカロリーを考えると飯を食う気にもならない。
しかたないから腰を据えてさっき買った酒を飲み始めた。
あーそういえば、月曜会社に行ったらこれしないとなーとか、忘れたかったことが頭に浮かんでしまう。
バスタオルで首を絞め、頭を壁に打ち付け、カッコウ、郭公、と泣いていた。
たぶん、頭で壁を鬱サマが、啄木鳥のように思えたのだろう。
キツツキの鳴き声がわからなかったので、かっこう、とないたのだ。
―――
予定がある日は概ねこのように過ぎる。
週末に散髪や通院をするときは、極力土曜の朝に予定を入れるのが働き始めてからの習慣だった。
酒に依存する前はこれで週末の時間を有効に使えていた。
だが、これでは酒を飲む時間が増えただけだ。
なにもしていない。
驚かれるかもしれないが、予定が散髪ではなく、旅行や帰省であってもこの調子で酒を飲んでから出かけていた。
友人と会うときもそうだ。
酒飲みが忘れたいことは2つだけだ。
過去の事と未来の事。
この2つを忘れるために酒を飲んで今を殺している。