タイトル:ゼロ
作者:堀江貴文
出版社:ダイヤモンド社

ホリエモンの本を読むのはこれが初めてだった。
私が学生の時に、ホリエモンは新興企業の創業者・経営者として、メディアに積極的に露出し、放送と通信の融合を掲げてニッポン放送の買収に乗り出したりしていた。
私は大学時代に会社法の先生のゼミに所属していたのだが、これは当時ホリエモンの活動を目にしてM&Aやコーポレートガバナンスに興味を持ったのが大きな理由の一つだ。

本書では、単純な仕事論、人生論ではなく、氏の幼少期の境遇や家族との軋轢などをかなり赤裸々に書いている。
あまりそういう話をしなさそうな印象を持っていたので、率直に言って親近感が湧いた。
家族と距離を置きたくて熱心に勉強して進学したのは私も同じだったからだ。

印象深かった点を挙げる。
・やりがいは作るもの。没頭する
→これは実感として理解できる。
 不本意な仕事でもあとから振り返れば良い経験だったと思えることもあるし、自分が相応の時間と熱意をかけて取り組んだことはたいてい愛せる。
・貯金ではなく自分に投資する。
→貯金は何も考えなくていい。
 勉強や技能の習得に投資したり、投資で運用することは頭を使うのでそれが嫌な人がやっているだけだとのこと。
 あまりその視点で考えたことはなかったが、間接金融の意義はその点にあるのかも。 
・考えることと悩むことを峻別する。考えることは物事をシンプルにしていくことで、悩むことは物事を複雑にすること。
→これは目から鱗が落ちた。
 頭を使って考えているつもりでも、不安材料を並べただけで終わってしまい、事態が複雑になったという経験は私にもある。
・働くことは自由へのパスポート
→氏は子供時代に戻りたいとは思わないという。これには私も同感だ。
 単純に逃げ場がなかった当時を嫌っている私と違い、本書では、本当の自由は責任の先にしかないという一歩踏み込んだ視点を提示している。
・人生は今しかない
→この言葉を使って、人生のモデルを語る風潮や、年金を気にする若年者に対して違和感を提示している。
 ニーチェやアドラーとも通じる。人生は連続する刹那である。あるいは永劫回帰。