タイトル:アルケミスト 夢を旅した少年
著者:パウロ・コエーリョ(翻訳:山川紘矢、山川亜希子)
出版社:角川文庫

ブラジルの小説家パウロ・コエーリョの作品。
訳者のあとがきによると、現地での初版は1988年とのことだ。
学生時代に、友人に勧められて同じ著者の『悪魔とプリン嬢』を読んだ。
内容は全然覚えていない。

アンダルシアを旅する羊飼いの少年が、夢の導きに従ってエジプトのピラミッドを目指す。
占い師、セイラムの王様、泥棒、クリスタル売り、錬金術士志望のイギリス人、オアシスの少女、錬金術士
多くの人々と出会いながら少年の旅は続く。

タイトルの割に錬金術師は全面に出てこない。
ただ、最後の方で少年が砂漠の声を聞くところで、鋼の錬金術師で出てきた「一は全、全は一」の考え方と繋がるような問答があった。

◯散りばめられた寓話
寓話めいた話が多いが、星の王子さまほど説教臭くない。
対象年齢が高いからだと思うが、ストーリーの節々で、比較的出しゃばらないような格好で寓話が散りばめられている。
夢と人の願望についての話が多く出てくる。

主人公の少年サンチャゴの父は、サンチャゴを神父にしたかった。
だがサンチャゴは、世界を旅したいという。
現実的に彼が就ける職で世界を旅することが出来るのは羊飼いしかない。
そこで彼は羊飼いになった。

クリスタル商人は、メッカに巡礼したいと思っている。
若いころは、商売を成功させて巡礼に出たいと思っていた。
店を持つと、壊れやすいクリスタルを置いて巡礼に出ることが出来なくなった。
今では、いつか巡礼に行くということを目的にして日々を生きている。
巡礼に出ないのは、それを成し遂げたあとの自分が目的を失ってしまうことを恐れているからだ。

キャラバンのらくだ使いは、かつて果樹園を持っていた。
豊作に恵まれたことから、彼は念願のメッカへの巡礼を果たす。
その後、ナイル川の氾濫が発生し彼は全てを失う。
彼はアラーの言葉を引用する、「人は自分の必要と希望を満たす能力があれば、未知を恐れることはない」と。
そして続ける「自分の人生の物語と世界の歴史が同じ者によって書かれていることを知れば、自分の持ち物を失うことを恐れる必要はない。」

◯スピリチュアルやね
霊的なものに導かれる場面や、超常現象が出てくる。
ファンタジーが苦手な人は引っかかるかもしれない。
神が身近にいない人にもし易い解釈としては、意志の力≒霊的な導きということかもしれない。
自分の心が、何を求めているか、耳を澄ませて聞いてみよう。
そんな気にさせてくれる。 
「お前が何かを望めば、宇宙のすべてが協力してそれを実現するよう助けてくれるよ。」

◯意志が道を開く
旅の途中で、サンチャゴは有り金を全部盗まれてしまう。
彼は選ばなければならなかった。
自分が泥棒にあった哀れな犠牲者であると考えるか、財宝を求める冒険者であると考えるか。
『僕は冒険者だ。』
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気の持ちようと言うと陳腐だ。
しかし、惨めな人間は例外無く自分を惨めだと思いたがっている。
だから、僕達も自分は冒険者だと考えよう。