自分は他人よりも旅行欲が低いなぁ、と感じる。
不本意な労働に従事していて、時間が限られるので、旅行よりもプライオリティが高いことが多いからかもしれない。
「ビーチリゾートががいいぞ」という人がいる。
私はビーチに行っても結局本を読んで過ごすことになるだろう。
「山がいいぞ」という人もいる。
景色は素晴らしいかもしれないが、運動だったらジムでやったほうが効率的だと思う。
労働の対価として得た貴重なお金もかかるし。

旅行を全然しない家で育った。
小学生3,4年生くらいの時に、家族で旅行に行った。
父親は車の中でずっと不機嫌にしており、周りの車の走行マナーに怒鳴る。
それを咎めた母親と口論をする。
挙句の果てに目的地の前にパチンコに立ち寄る始末。
改めて文字に起こすと完全に終わっている。
それ以来家族旅行は1回もしていない。

家族旅行は懲り懲りだったが、青年期には旅人に憧れた。
高校の時に担任だった英語教師(教員という職業の人間で私がただ一人尊敬する人物だ)の薦めで沢木耕太郎の深夜特急を読んだ。
いつかは私もこんな旅をしたいと思った。
明らかに本書に触発されて、後にタイ、カンボジア、マレーシア、シンガポールを1ヶ月弱かけて旅をした。

小学生時代にスーパーファミコンの『ガイア幻想紀』という作品にはまった。
『ソウルブレイダー』(これも大好きだった)と『天地創造』と併せてクインテット三部作と呼ばれる作品群の2作目だ。
ジャンルはアクションRPGで、異世界が舞台だが、アンコール・ワットやピラミッドなど、実在の遺跡をモチーフとしたダンジョンを旅する
無感動な私も悠久の時を経た遺跡には胸が踊った。
スケールの大きさに圧倒されるし、長年残っている遺跡との対比で有限の自分という個体を客観視出来る点が好きだ。
アンコール・ワットは先に述べたインドシナ半島の旅で最優先の目的地として訪れた。
また、ガイアには出てこないのだがジャワ島のボロブドゥールも後に訪れた。

つまるところ、私は生き方としての旅人に憧れたのだ。
世界を見聞することに興味がないわけではないが、それ以上に旅人の持つ自由を好んでいたのだ。
見知らぬ土地で言葉もあまり通じない中で食事や宿を求めることがしたかったわけではない。
やりたいことがあれば身軽に動けるのが理想だが、やることが明確な状況下では、いったんベースとなる拠点を作るのが私の居心地の良いスタイルなのだと思う。
娯楽としての旅行で考えると、アンコール・ワットとボロブドゥールは訪れることが出来たので、後はウユニ塩湖と聖家族教会を訪れてみたい。



劇的紀行 深夜特急 [DVD]
大沢たかお
ソニー・ミュージックディストリビューション
2002-03-20