タイトル:我が逃走
著者:家入一真
出版社:平凡社

本書を手に取るまで、家入一真という名前は知らなかった。
氏が出馬した2014年の東京都知事選には私も確かに投票したのだが。

著者はロリポップサーバーで有名な現GMOペパボの創業者だ。
GMOペパボ以降もいくつかの会社を立ち上げ、シリアルアントレプレナーと評されている。
(シリアルアントレプレナーとしては、PayPal創業者のイーロン・マスクが有名。) 
本書では、福岡で創業したGMOペパボの東京進出と上場、2社目の起業と失敗、その後何社かの起業、東京都知事選出馬という順で話が進む。

本書の冒頭でも書かれているが、氏は中学生時代にいじめが原因で引きこもりになり、会社員生活にも馴染めなかったので最初の会社を作ったという。
会社で働きたくない私としてはその動機に親近感を覚えて本書を手にとった。
成功と失敗を経験した起業家の半生記なので読み物としてはかなり面白かったが、共感や指針は得られなかった。

イマイチ共感できなかったのは以下の2点が決定的に私と違うからだと思う。
・ネットワーキング
著者は引きこもり経験者でありながら、かなり社交的だ
20歳位のときに結婚して子供も作っている。
東京に出てきてからは同世代のIT企業の経営者や、2社目で失敗してからも若いクリエイターと交流して力になったりしている。
反面、利益目的で自分を利用しようとする人間に気付かず、2社目が傾く要因になる。
この一点においては、孤立を求めている私とはかけ離れたパーソナリティだった。

・マネジメント
創業社長ってそんなものなのかもしれないが、管理業務は自分以外の誰かがちゃんとやってくれて当たり前、というスタンスに結構腹が立った。
特に参謀役が口を酸っぱく注意するのも聞かず、2社目を破綻させる様は読んでいてムカムカする
私は金勘定が得意で好きな側の人間なのだと改めて感じた。