『考えてみれば人間はどうしようもない生き物だ。年がら年中発情期なんだから。』
吉田秋生の漫画で勉強の得意な猿渡君が言っていた。
たしか、「夢見る頃を過ぎても」に連なる群像劇のなかの一話だったと思う。
もう30年くらい前の作品で、登場する青年達の行動様態は現代のそれとは結構異なるが、青年期の中心的なトピックが『恋愛』、『友情』、『未来』であることは今日まで変わらない。
掲題のとおり、人間の発情期は夏ではないかというのが私の持論だ。
冬に人肌が恋しくなることは特に無いのだが、夏になるとムラムラすることが多い。
花火や夏祭りなど、つがいで参加することを目的としたイベントも多い。
夏祭りの起源は、農村においては過酷な夏季の農作業を労うための行事であり、都市では高温多湿により流行する疫病を封じるための祭礼であったという。
起源は意味を失っても、多くの祭礼が残っているのは、発情期にある人間たちに都合が良いからではないかと考えたりもする。
孤独を選んだはずの自分であったが、この季節に限っては、幸福そうに歩くつがいの人間たちへの嫉妬と、過去の美しい思い出がもたらす悔恨を捨てることが出来ない。