タイトル:国民クイズ(上・下巻)
著者:原作 杉元伶一、画 加藤伸吉
出版社:太田出版

私の父親の唯一の良い所は、毎週モーニングを買っていたことだ。
初めはクッキングパパくらいしか読んでいなかったが、『鉄人ガンマ』『天才柳沢教授の生活』、昨年完結した『ピアノの森』など、秀逸な作品が多く連載されていた。
クッキングパパはまだ続いており、連載当初は小学生だった息子のまことも大学を卒業して働き始めた。

ディストピアを描いた問題作

『国民クイズ』は、1993年からモーニングで連載されていた作品だ。
講談社版はすでに廃刊になっているが、太田出版による復刻版が現在流通している。
20XX年、日本では民主主義は終わり、国民クイズによる政治が行われている。
国民クイズは毎晩実施される。
地区予選、予選、本選を見事勝ち抜いた回答者には、国家権力を総動員して「願い」が叶えられる。
「高利貸しに復讐したい」「エッフェル塔が欲しい」、回答者の願いに貴賎はない。
国民クイズの前では、「処女の双子と3Pしたい」という願いも「孤児院を設立したい」という願いも等価だ。
だが、敗退した回答者は強欲の対価として相応のペナルティを負う。
収容所への強制収容やシベリアでの強制労働、残りの人生は失われる。
かつて国民クイズに出場し、敗退し受刑者となった主人公のK井K一は、現在国民クイズの司会者として国民の圧倒的な支持を得ている。
ディストピアを舞台に 、国民クイズ体制の崩壊を狙う革命分子と、K井K一の家族、多くの人々の思惑が交錯し、物語は進んでいく。

民主主義の限界をテストで乗り越える?

20年以上前の作品だが、現代を予見しているような記述が多くある。

国民クイズのテレビ放映の合間に、各省庁がCMを流す。
厚生省では「年金の支給は抽選制になりました」という。年金制度の破綻だ。
また、物語のクライマックス、体制を批判するK井を、国民クイズ省の高官は以下のように論駁する。
「国民クイズを打倒して一体誰にこの国の運営を委ねるつもりだ!
アホな政治家共にか?!それとも投票すらしない一般市民とやらにか?!
日本人は腹をすかせた豚と一緒だ。
課せられた義務はゴミ同然に無視し、与えられた権利だけを宝石扱いする!」
-支持率のために既得権に踏み込まない政治家
- 市民の責任の放棄たる投票率の低下
- 既得権を手放そうとしない特権階級と社会的弱者
日本だけの問題ではない。
ドナルド・トランプの支持者しかり、EU離脱に票を投じた英国民然り、世界が民主主義の限界に直面している。

民主的に出された結論は納得感はあるかもしれないが、正しさは担保しない。
一つの解決策として、私は常々、政治家には国民の投票だけではなく試験も課すべきだと考えていた。
基礎学力を問う共通問題と、専門分野(選択式)のテストを課すのだ。
ちょっと国民クイズ体制と共通するかもしれない。