タイトル:自由な働き方をつくる-「食えるノマド」の仕事術
著者:常見陽平
出版社:日本実業出版社

著者は、リクルートとバンダイで勤務した後に独立した人物だ。
独立後は、人材コンサルティング会社の立ち上げに参画したり、大学院に行ったり、執筆家・評論家として活動している。
人材・キャリア関連で多くの著書があり、BLOGOSにも寄稿しているので、氏の文章を読んだことがある方は多いと思う。
本書は、日本でフリーランスとして生きていくためのストラテジーについて書かれたものだ。
その背景には、2012年くらいに流行った「ノマド」礼賛に対する著者の違和感がある。

著者は人事関連の仕事が長く大企業での勤務経験も長いので、極めて地に足のついた議論をする。
大企業のサラリーマンが独立する上で参考にするのであればもってこいのロールモデルであろう。
反面、雇われて働くことに絶望しており、この絶望をなんとかしたいと思っている人(私のことだ)には耳が痛い。
フリーランスであっても、人間関係から完全にはフリーになれるわけではないし、明確な強味がなければ仕事を得られない。

本書は5章だてで、以下の内容について語られる。
①日本における「働き方論」の変遷
②日本におけるフリーランスのリアル
③フリーランスに向いているかの自己分析の勧め
④⑤フリーランスで働く上でのノウハウ
②、③あたりもかなり面白いのだが、本稿では①について取り上げたい。

日本におけるノマドの支持者達の主張が楽観的に過ぎるのではないという違和感から、筆者なりにノマドを定義しようと試みる。
社会学者の古市憲寿の論考等を引いて、「ノマド」は会社に雇われない生き方(昔の脱サラと同じ)の2010年代版のスタイルであると仮定する。
戦前の漱石の作品によく出てくる高等遊民からは、どことなくノマドの匂いがする。
戦後の1960年台は、町工場を立ち上げる人間がたくさんいた起業家の時代であった。
その後の1970-80年代にかけては、脱サラブームが到来する。
1990年から2000年台初頭にかけては、フリーターや派遣社員といった働き方が登場した。
ノマドは、技術革新と社会の発展により自由な働き方のコストが低下したことにより産まれた、会社に雇われない生き方の現代版のスタイルなのだ。

また、当サイトでも取り上げたダニエル・ピンクの「フリー・エージェント社会の到来」についても言及されている。
ノマドの擁護者は、同書の「米国では4人に1人がフリーランス」という内容を引用する。
しかし、彼らの多くが、同書で言うフリーランスには配管工やトラック運転手などの職業も含まれている点を見落としていると指摘している。
確かに、同書のフリーランスは「自営業者」と解する方が日本人にはしっくり来るかと思う。