タイトル:なぜ日本人は、こんなに働いているのにお金持ちになれないのか?
著者:渡邉賢太郎
出版社:いろは出版

著者は大学卒業後証券会社でリテール営業をしていたが、リーマンショックを機に会社を辞め、世界を旅した。
そこで見た人々の生活などを通して考えたお金に対する考え方などが書かれている。
著者は1982年生まれ。私と同世代人である。

書店でタイトルを見て気になっていたのだが、アマゾン等のレビューで酷評されていたので手に取らなかった。
読んでみてなるほどと思ったが、同じようなことが細切れに何回も書かれており冗長な印象を受ける。
その割に、タイトルの問いへの回答が明確になされない。
金融教育の不足を指摘するが、どのような教育が必要か提言がない。
お金では幸福になれないと指摘するが、ではどのように考え方をシフトさせるべきかがあまり語られない。
また「ロンドン証券取引所の外国為替の一日の平均取引金額は2兆7260億ドルで、ダントツの世界一。」という信じられないような嘘が書かれている。
インターバンクの為替取引は取引所取引ではないというのは気の利いた大学生でも理解していることだ。
誰か校正しないのだろうか。。。

ただ、読んでいていくつか参考になる観点もあった。
◯イングランド銀行の博物館では気球を上下に動かすゲームで金融政策によるインフレ率の操作を説明している
◯現代の日本人は価格交渉が苦手だ。 定価販売を始めたのは三井高利の越後屋という説がある。
これは金融リテラシーと絡めると非常にはっとした観点だ。
企業価値分析におけるDCF法や、オプションのプライシングにおけるブラック・ショールズモデルのような「資産評価モデル」は 現代のファイナンス理論の大きな柱だ。
これはまさに、モノの価値を評価することだ。
定価販売は便利だ(私は人と話すのが嫌いだから定価販売大好き)が、消費者が自身で価値を評価するという観点を曇らせてしまっているのかもしれない。

積極的には薦めませんが、旅行記が好きな方はそれなりに楽しめると思います。