先日、永田カビさんの『さびしすぎてレズ風俗に生きましたレポ』を読んだ。
レズ風俗に関する内容は後ろの半分くらいで、前半は著者の生い立ちや病んでしまった経験が書かれている。
私もうつ体質なので共感しながら読んだ。
著者は今Pixivコミックで『一人交換日記』という連載を持っていて、そちらも併せて読んだ。
(リンク:一人交換日記) 
少なからず問題がある家庭のようで、母親に対する思いは自分と似たようなところがあるような気がした。
掲題の通り、私には「母親は自分のせいで不幸になったという負い目」があるのだ。

私の家族の問題

父親は気に入らないことがあると怒鳴り散らす暴君だった。
風呂場で石鹸がない、物が壊れた、野良猫が五月蝿い、そのようなことも家族の責任であるかのように怒号をあげた。
息子の目から見て、この人は学問でも仕事でも優れた成果をあげたわけではない。
にもかかわらず他人を見下しており、自分が他者より高い場所にいるような振る舞いをした。
幽遊白書で、玄海師範が魔族になった幽助に向かって「人はだれでも自分の意志で壊せるものがある。あんたはそれが他人より大きいだけだ。」という旨のことを言って、突き放しつつもなぐさめる場面がある。
父親にとって「家庭」とは、自分の意志で壊せる小宇宙だったのだろう。
それは中心にいない者達にとっては地獄だ。
祖母も問題の多い人だった。
時代のせいで満足な教育を受けられず、受けられた教育の範囲では優等であったために、「自分は虐げられた」「親に理解があれば自分はこんな身分には甘んじていなかった」という歪んだ世界観に満ちていた。
ある年の瀬の大掃除の際に、家を訪れた業者の振る舞いが気に入らなかったようで、私から見れば取るに足らないことに激しく立腹した。
外の人間である業者には何も言わず、なぜか家族の者に「そんなことを許したのはお前たちの責任だ」という理不尽な批判を一ヶ月も続けていた。
また、夜中に幽霊を見たと言って半狂乱になり、孫の誰かを自分の部屋で寝かせるようせがんだ。
小学校2年生くらいであっただろうか。
年長であった自分が弟妹の代わりにその役を引受け、しばらくの間、慣れない祖母の寝室で寝ることとなった。

私が感じる負い目

この家に嫁がなければ、私の母親はもっと幸福であったのではないかと思う。
永田さんの母親と祖母の関係と少し似たようなところがあるようで、一人交換日記では「家庭内に互いへの敬意がない」と書いていた。
私の生まれた日と両親が結婚式を挙げた日を見比べると、式を挙げたときには私はすでに母親の胎内にいたようだ。
私がいなければ、母はこのような問題のある家庭に嫁がず、もっと幸福な人生があったのではないか。
そのような考えから、私は母親に対して加害者であるかのような負い目を感じることになった。

父親が職を転々としていた反動からかもしれないが、母は私に、一つの会社で勤めあげることを望んだ。
だが、私はそれには耐えられなかったので、10年で2回ほど転職をしている。
もちろん、父親のような無軌道な転職ではなく、自分のキャリアと積みたい経験を考えてのことだ。
だが、母には理解されず、都度悲しそうな顔をされた。
今現在、私が心が壊れるほど働き続けたのも、転職に対する引け目から、せめて正社員の地位だけは続けようとしていたからではないかと思う。
このように考えることは、何よりも嫌っていた父親や祖母と同じ責任転嫁の論理なのかもしれないが。

『一人交換日記』の5話目で、永田さんが「私の幸せはお母さんを見捨てることで手に入る」と言い、涙を流す場面がある。
我が身と通じるところがあって、胸が苦しくなった。