先日、「親になる自信がない」「経済的に余裕がない」「仕事との両立が困難」などの理由で、子供はいらないと考える人が相当数いるという内容のネットの記事について思うところを書いた。

その中で、厚生労働省の国民生活基礎調査で、過去30年で「夫婦のみの世帯」の数が2倍以上に増えたことについて言及があった。
記事だと、子作りに消極的なカップルが増えたことがその一因だという話の運び方だった。
ただ私は、それも一因だとは思うが、30年というスパンで見るなら三世帯同居が一般的でなくなったことの影響のほうが大きいのではないかと、少々違和感があった。
調査の中身を見てみたので、興味があればご覧いただきたい。

日本の世帯数の30年前との比較

簡単な表を作った。

表.日本の世帯数の変化
household


3つのまとまりに分かれているが、一番上のまとまりが総世帯数のブレイクダウンだ。
調査の期初(1986年)と期末(2015年)で、世帯数が12,817千世帯増えている。
人口は3.7%しか増えていないのに、世帯数は34%も増えているのだ。
増えたものの内訳は、夫婦のみの世帯単独世帯で概ね半々だ。
三世代同居や、一般的な核家族のイメージである夫婦と未婚の子の世帯は減少している。

中段は高齢者世帯の世帯数の変化だ。
期中に増えた12,817千世帯のうち、10,352千世帯(10,352/12,817 =80%)が高齢者世帯だ。
ただ、高齢者世帯以外の世帯も相応に増加している。

下段は、世帯数ではなく人口ベースの高齢者数だ。
ご存知の通り、期中の人口の増加率3.7%に対して175%、22,032千人の増加である。
そして、そのうち4分の3が夫婦または単身で暮らしている。

通して見てみると、以下のような構図が出てくる。
三世帯同居がバラバラに暮らすようになった結果、夫婦のみの世帯と単独世帯が増え、総世帯数が増加した。
単純に考えて、1つの三世帯同居世帯が分かれて世帯を設けると、祖父母夫婦1世帯、親世代の夫婦1世帯、単身または既婚の子供世帯(子供の数だけ)、で3世帯以上の世帯が発生することになる。
そして、増えた総世帯数の80%は高齢者世帯だが、それは65歳以上の人口が絶対数でも構成比でも激増しているため。
上段の表の夫婦と未婚の子の世帯が減少していることが気になるが、足元の20年で40歳未満の日本人がだいたい1,200万人減っているので、自然減だと考えられる。

参考:日本の年齢層別の人口変化
population_japan


出典:厚生労働省 平成27年 国民生活基礎調査の概況
    http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa15/index.html
    総務省統計局
         http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm


考察

・集合住宅需要と三世帯同居の解消

10年以上前から地方に活力をと言われているが、東京への一極集中は一向に緩和されない。
東京の不動産は諸外国と比べると割安と言われるものの、一般的な勤め人にとってはかなりお高い。
世帯がスモールになっているので、集合住宅でも相応に快適に暮らすことが出来るようになっていることが一極集中を相当程度サポートしてきたのかもしれない。
また、東京一極集中でよく言われるのは、子世代が大学進学のために上京して、そのまま働き口(と都市としての魅力)の多い大都市圏で就職し、結婚しても首都圏に世帯を構えるというストーリーだ。
逆に言えば、そのストーリーを多くの人がなぞる過程で、アフォーダブル(購入可能)な集合住宅を選択した結果、三世帯同居は崩壊したという側面の方が強いのかもしれない。

・日本人は個人主義

以前、橘玲氏の『(日本人)』(読みは「かっこにほんじん」。幻冬舎刊。)と言う本を読んだ。
その中で、「各国の調査を比較すると、日本人は諸外国の人々よりも、集団で物事をやるのが好きではなく、個人が好きなように生きることに価値を置いている」という旨の考察があり、とても腑に落ちた。
(本は手放してしまったので、正確な表現ではないかもしれない。)
皆、口では綺麗事を言いながらも、あんまり家族に小うるさく言われたくないし、いちいち許可を求めるのも馬鹿らしいから、世帯はどんどん小さくなっていったのかもしれない。
社会通念上の強制が薄くなれば、世帯はどんどん小さくするインセンティブが日本人にはあるのかもしれない。
親世代なら、自分がグリップできる子供達とだけ暮らした方が楽だし、子世代であれば親元を離れる契機があれば喜んで離れて行きたいのだ。