議論や言い争いにおいて、テーマを離れて相手の「属性」を攻撃しようとする人がいる。
どちらかと言うと、リアルよりも掲示板やWebのコメント欄のような匿名のやり取りで多い気がする。
感情的になってそのような言動に及ぶ場合もあるが、発言者を貶めることで発言の信頼性を下げることを目的として意識的になされる場合もあるだろう。
選挙や国会の報道で、後者の目的での発言を嫌というほど見かける。
フィクションの裁判シーンでも、証人の適格性を貶めることで証拠能力を否定しようとするのは常套手段だ(実務ではどうなんだろう)。

こういった闘争の相手への直接攻撃は、ざっくりと2つの類型に分けられると考えている。

  • 社会的に価値が低いと考えられている、または少数派である点を攻撃する
「そんなんだからいい年して独り者なんだ」
「年下のくせに生意気だ」
「1人が好きなんて寂しい人間だね。友達がいないの?」 
「スマホゲームで有料アイテムを購入するなんてバカだ(この文脈で「課金」というのは誤用だと思う)」 
「そんなものを喜んで食べているなんて舌が貧しい(馬鹿舌子供舌といった類)」
「食事の行儀が悪い(クチャラーや箸の持ち方といった類)」

社会通念や数の論理を背景に、発言者を貶めようとする。
本題ではないが、後ろの2つのように食に関して他者を貶める人は結構いる。
確かに、私も音が気になる質なので他人の咀嚼音は気になって仕方ない。
ただ、箸の持ち方はどうでもいいし、食の嗜好に貴賎は無いと思う。

  • 二者択一の属性を攻撃する
「低学歴は仕事が出来ない/いい大学出てこれかよ」
「男だから/女だから」
「これだから文系は/これだから理系は」
「健常者だから/障害者だから」
これらの属性は、基本的には両方に属することが出来ない(複数の学問に通じていたり、性転換していたりと、二者択一に当てはまらない人ももちろんいる。)。
両者の属性は平行線であるという固定観念や、相対化により発言者の資格を貶めようとする。


いずれの場合も、自分が愛着がある属性を攻撃されると腹が立つことこの上ない。
例えば、自分がポリシーを持っていたり(職務内容)、努力して獲得したり(学歴や資格)、長い間付き合ってきたもの(性別)がそうだ。
「そんなんだからいい年して独り者なんだ」
→俺は人を愛せないから相応の覚悟を持って独身なんだ(モテないのも事実だけどさ)
「そんなものを喜んで食べているなんて舌が貧しい」 
→食事に金を使う方が馬鹿らしい。腹に入れば一緒だ。
「男だから/女だから」
→一部の人間の特徴を全体に当てはめるな。

ただ、自分がその属性の代表者であるかのような気持ちになってやり返すのは避けたほうが良い
応じてしまうとどういうわけかこちらが負けたような雰囲気になるし、何よりも疲れる。
自分のスタイルや属性にあまり肩入れしない方が気楽でいられる。

とはいえ、属性を全て取り払った後の私には何が残るだろう。
玉葱のように芯が残れば良いが、何も無いような気もする。
これは結局「あるがままの自分は愛される価値があるか」という自己評価の問題に回帰するのかもしれない。